誘導負荷を含む3相ダイオード整流回路

 

回路の動作原理

3相ダイオード整流器は、3相交流電圧入力を、単相直流電圧出力へ変換します。この動作原理では、解説の簡略化のため、電源/負荷インダクタンス(Ls 、Ld)の影響を無視します。直流(DC)電圧の出力波形は、交流(AC)電源の1周期(基本周波数)に対し、交流各相の線間電圧(VLL)組み合わせに対応した6つの領域(セグメント)によって、分割されています。

各領域(セグメント)には、最小/最大の直流電圧が存在します:

  • 「最小」直流電圧 : 1相の線間電圧が「0V」になる際に、直流電圧の「最小値」は、「VDC = VLL・sin(60°)」となります。
  • 「最大」直流電圧 : 2相分の線間電圧が同一値になる際に、直流電圧の「最大値」は、「VDC = VLL」となります。

最小/最大直流電圧の間に存在する平均直流電圧は、「VDC,av= VLL・3/pi」によって定義されます。直流電圧のリップルは、交流電源の1周期(基本周波数)に対し、6回発生します。6つの位相状態における相電流(Ia、Ib、Ic)の信号は、以下の組み合わせによって定義されます。
 

位相状態 相電流の信号
0°<φ<60° ( 0,-1, 1)
60°<φ<120° ( 1,-1, 0)
120°<φ<180° ( 1, 0,-1)
180°<φ<240° ( 0, 1,-1)
240°<φ<300° (-0, 1, 0)
300°<φ<360° (-1, 0, 1)

インダクタ(コイル)の影響

単相ダイオード整流器と同様に、負荷(Ld)/電源(Ls)インダクタンスを考慮する場合、2組のダイオードペア間で電流の転流が発生します。電源インダクタンス(Ls)に大きな値が適用された場合は、電流の転流間隔が長くなります。例えば、上述した「位相状態 1(0°<φ<60°)」の直後に、電流は、2組のダイオードペアD5/D6と、D1/D6との間で転流します。この位相状態の間、ダイオードD1とD5が導通して、線間電圧Vcaが「0V」となり、直流電圧が降下します。直流電圧の降下は、「ΔVout~Ls」のように、電源インダクタンスと比例します。

シミュレーションモデルでの実験

  • 電源インダクタンス:Lsを、「0 μH」から「50 μH」へ変更して、電流の転流間隔の増加および負荷電圧の降下を確認して下さい。
  • 大きな値の負荷インダクタンス:Ldが直流電圧のリップルを低減することを確認して下さい。