電源回路用Type2/Type3補償器の解析

PLECSのデモモデルに含まれている、この事例では、電源ユニット(PSU)で使用するType2/Type3アナログ補償器の特性を解析しています。解析されるPSUは、非理想的インダクタ/キャパシタを使用した降圧コンバータです。プラントの零点および極におけるキャパシタの役割、および等価直列抵抗(ESR)について解説します。さらに補償器の性能として、位相余裕、システム帯域幅、クロスオーバー周波数でのゲイン変化率に関して解析します。

電源回路

解析対象PSUは静電容量とESRの影響を調査するシンプルな降圧コンバータです。プラントの伝達関数は次式を用いた単純化が可能です:


ここで、「s」はラプラス演算子であるため、プラント伝達関数は周波数に対する関数として変化します。 GPlant(s)では、システムに対するインダクタ抵抗の効果は、最小限と想定されているため無視されます。 降圧コンバータのLCフィルタとESRの影響によるシステムの2重極および零点は、それぞれ次式で与えられます:



電圧制御器は、システムの零点と極を配置して、目標の開ループシステム特性を得るように設計されています。

制御ロジック

モデルは開/閉ループ制御システムとして実行することができます。 手動切り替えスイッチブロックをダブルクリックすると、モデルの設定(開ループ/閉ループ)を切り替え可能です。 閉ループ制御システムは、過電流保護および電圧モードレギュレータによって構成されています。 電圧モードレギュレータは、Type2/Type3補償器のどちらか一方が動作します。

閉ループシステムは、システムの動的特性/安定性を確保するために以下の仕様が要求されます:

  • システム帯域幅はスイッチング周波数の「11015
  • システムクロスオーバー周波数付近のゲインは「-20dB/decade」の傾き
  • 位相余裕は「45度」以上

Type2補償器

Type2補償器は、目標のクロスオーバー周波数 (fx) がfLCとfESRより大きなシステムで使用します。これは次式となります:

fLC < fESR < fx < fsw/2,

ここで、 fsw/2はスイッチング周波数の半分の帯域になります。これを可変サブシステム内で「システム1」として使用します。

上図に示すように、Type2補償器は、理想オペアンプ(有限利得)を使用して実装しています。 オペアンプのゲインは、「106」に設定してあります。正入力端子は基準電圧(V_ref)に接続されています。 降圧コンバータの出力電圧(V_out)は、分散した抵抗器を使用してスケーリングし、オペアンプの負入力端子に接続されています。 この負入力はRC回路を介して、オペアンプ出力値にも接続されています。

Type2補償器の簡略化伝達関数は次式を用いて定義します:


目的のシステム性能を得るため、零点と極が下記仕様を満たす、抵抗器とキャパシタを選択します:

fz1 ≈ 0.75 · fLC

fp2 ≈ fsw/2

原点(fp1)の極と一緒に上記条件の零点/極を配置すると、閉ループシステムの開ループ伝達関数が、目的の特性を示すことが確認できます。

Type3補償器

fxがfESRより小さいシステムでは、 Type2補償器では、目的の閉ループシステムの応答/安定性を実現できない場合があります。 そのような場合は、Type3補償器を使用します。

Type2補償器と同様に、Type3補償器は、理想オペアンプ(有限利得)を使用して実装されます。Type3補償器を上図に示します。システムは次式となります:

fLC < fx < fESR < fsw/2,

Type3補償器で追加される零点/極によって、高速/安定化したシステムの閉ループ制御設計が可能になります。これを可変サブシステム内で「システム2」として使用します。

Type3補償器の簡略化伝達関数は次式で与えられます:

目的のシステム性能を得るため、零点と極が下記仕様を満たす、抵抗器とキャパシタを選択します:

fz1 ≈ 0.75 · fLC

fz2 ≈ fLC

fp2 ≈ fESR

fp3 ≈ fsw/2

原点 (fp1) の極と一緒に上記条件の零点/極を配置すると、閉ループシステムの開ループ伝達関数が、目的の特性を示すことが確認できます。

過電流保護回路

過電流保護用としてIR3840同期降圧レギュレータが、この回路でモデル化されています。 これは入力電圧源から発生する電流値を制限しています。 インダクタを流れる電流がシステムの最大許容電流値に達すると、 過電流保護システムがリセットされた数サイクル後に、 スイッチング変調指数は「0」に設定されます。

シミュレーション

モデルは上述した2つの異なるシステムをエミュレートするように構成されています。 補償器の設計工程では、プラントの解析モデルを検証するため、開ループ伝達関数を使用します。 PLECS解析ツールを使用することによって、開/閉ループ制御コンバータの周波数応答を算出可能です。 解析結果から得られるボード線図は、システム帯域幅、クロスオーバー周波数、ゲイン/位相余裕が、 目的の仕様を達成しているかを確認するために使用します。

Try it

モデルは、PLECS Blockset/Standaloneの「PLECSデモモデル」ライブラリに格納されています。