PLECSのデモモデルに含まれている、この事例ではPFCスイッチング電源回路(定格:300W)をモデリングしています。 電源回路、制御ロジック(IC)、パワー半導体デバイスの温度変化特性(発熱)を組み合わせシミュレーションしています。
電源回路
電源回路は、ダイオード整流器とPFC回路の、昇圧回路トポロジーによって構成されています。 CLCノイズフィルタを通過した単相電圧は、ダイオード・ブリッジによって整流されます。 ブーストコンバータには、効率改善のため、パワーMOSFET(CoolMOSTM)およびSiCショットキーダイオードが実装されています。
制御ロジック
制御 IC(ICE1PCS01 Infineon社)は、制御ブロックモデルを組み合わせてモデリングされ、 平均電流制御による電流連続モード(CCM)で動作します。 制御器は、内側の電流制御ループと外側の電圧制御ループによるカスケード接続で構成されています。 外側の電圧制御ループが、出力電圧を制御する間、 内側の電流制御ループは、平均電流の入力正弦波形を制御します。 制御ICモデルには、低出力電圧に対応するため、ソフトスタート機能を実装していますが、 過電圧/ピーク電流保護等の機能は実装されていません。
熱回路モデル
MOSFETの熱挙動をシミュレーションするため、特殊なコンポーネントを使用します。 MOSFETのモデル内部にはチップの熱容量をモデリングするヒートシンクが組み込まれており、 このヒートシンクが、MOSFETと還流ダイオードから発生する、全ての導通損失とスイッチング損失を検出し、 損失エネルギーから生じる熱をヒートシンク内の回路要素に正確に反映します。 損失値は、スイッチのケースをモデリングする、熱等価RCブロックによって伝播されます。 ケースの端部に配置されている雰囲気温度ブロックは、放熱器をモデリングする外部のヒートシンクと接続します。 SiC昇圧ダイオードモデルでは、デバイスの熱インピーダンスが熱設定によって直接入力されます。
シミュレーション
一定負荷条件における電源回路の始動特性を確認しています。 電気物理量を表示するスコープでは、正弦波電源電流と出力電圧の上昇が表示されます。 出力電圧には、120Hzのリップルが確認できます。 2つ目のスコープでは、MOSFETのジャンクション温度と昇圧ダイオードからの発熱が確認できます。 外部ヒートシンクの温度は、このシミュレーションに適用されているシミュレーション時間に対し、非常に緩やかに上昇していきます。
定常解析
パワー半導体およびヒートシンクの温度出力が定常状態になるまで、 通常のシミュレーションを実行するのは実用的ではありません。 熱解析では時定数が非常に大きくなるため、シミュレーション時間が数時間に及ぶ可能性がありますが、 定常解析を実施すると、短時間で、簡単に定常状態の温度を確認することができます。