LLC可変周波数共振コンバータ

PLECSのデモモデルに含まれている、この事例では、周波数制御で動作する絶縁型DC/DC共振コンバータをモデリングしています。 コンバータの出力電圧はパワー半導体の、スイッチング周波数を変更することによって制御しています。 ゼロ電圧スイッチング(ZVS)が、スイッチング損失を低減するために適用され、速い帯域におけるスイッチング周波数コンバータ動作を可能にします。

電源回路

共振形(LLC)コンバータは、Hブリッジを有するDC/DCコンバータです。 Hブリッジ交流側は、直列接続された共振インダクタ/キャパシタを介して、高周波変圧器の一次側に接続しています。 変圧器二次側は、全波ダイオード整流器に接続しており、交流変圧器の出力は、リップルの大きな直流電圧に変換されますが、 フィルタリングにより、リップルは低減します。

共振形(LLC)コンバータは、対応した各アンチパラレルダイオード(例:D1)が導通している状態で、 各MOSFET(例:Q1)がターンオンするゼロ電圧スイッチング(ZVS)で、動作する条件が設定される場合が多く、 入力される直流電圧と比べて小さなダイオード順電圧がMOSFETへ印加されます。 これにより、デバイスターンオン損失が減少し、コンバータの全体的な損失低減が可能になります。 ZVS条件下では、電流がMOSFETを導通する際にターンオフします。 このデバイスのハードスイッチングにより、下図に示すターンオフ・スイッチング損失が発生します。

ターンオン/オフ中に各MOSFETのボディコンデンサは充放電されます。 MOSFET(ボディダイオードではなく)ターンオン時にハードスイッチングが発生する回路では、ボディコンデンサの電荷が消費され、スイッチング損失が増加します。 このような現象は、単純に熱損失参照テーブルに特性を記述することによって、 MOSFETと並列にキャパシタを配置しなくても、シミュレーションで再現可能です。 特定の動作条件に対するMOSFETのスイッチング・エネルギー損失検証の際に使用する熱損失参照テーブルを生成する場合は、MOSFETのボディコンデンサに蓄積された電荷を損失測定に含めることが重要になります。 MOSFETに対するZVS動作の利点としては、ターンオン損失を低減できることに加えて、 ターンオン(Q2/Q3)とターンオフ(Q1/Q4)の間隔が十分長い場合は、 ボディコンデンサに蓄積されたエネルギーが、再度、回路へ放出されることが挙げられます。 ZVS動作によるソフトスイッチングトポロジで、静電容量の影響を損失参照テーブルに反映していない場合は、 ターンオフ損失が10~20%過大評価される可能性があります。

制御ロジック

出力電圧は、伝達関数ブロックによってLPFをモデリングした、「Simplified Sensing」ブロックによって測定されます。 「Simplified ADC」ブロックは、測定された電圧値を対応したデジタル値に変換するため使用します。 出力電圧値は直流電圧指令値と比較され、この誤差がデジタルPI制御器(2-pole, 2-zero)に入力されます 「ADC INT」は、トリガ信号として割り込みルーチン制御を実行します(トリガサブシステムとしてモデリングされます)。 制御器はカウンタ周期指令値を生成し、これは「PRD -> Freq」ブロックによって周波数指令値に変換され、 この周波数指令値は「Variable Freq Carrier」ブロックで使用されます。 ハーフブリッジMOSFETのスイッチングには、50%のデューティ比が適用されます。 LLC可変周波数制御は、PLECS PIL用としてコンポーネント・ライブラリに実装されている、 ADC/PWMペリフェラルモデルを使用して実装することも可能です。

シミュレーション

直流200 V入力は、フルブリッジ回路の直流側に接続されています。 コンバータにはスルーレートが設定されているため、参照電圧変化時の出力電圧変化率は制限されています。 ソフトスタートアルゴリズムが採用されており、起動時の参照電圧変化率も制限されています。 このアルゴリズムは出力電圧が徐々に上昇する起動時に反映されます。 ソフトスタートによって起動した後、電圧制御器によってフルブリッジ回路のスイッチング周波数を制御します。 20ミリ秒後、システムの出力電圧は、指令値である直流300Vに達します。 下図は共振形(LLC)コンバータの、起動時からの時系列シミュレーション結果を表示しています。

PLECS熱設定ファイルはパワー半導体デバイスで使用可能です。 このモデルでは参照テーブルに、ボディーコンデンサの容量特性を含んでいないため、 前述したように、ターンオフ損失は、実際より大きく(最大で約20%)評価されています。 ソフトスイッチング制御は高周波スイッチング動作において、 MOSFETのジャンクション温度を適切な範囲に制御します。 また、このモデルでは磁気ドメインブロックも使用しているため、 飽和コアブロックの磁気部品サイズパラメータ等を変更して、 出力が目的のB-H曲線となっているかを、PLECS XY Plotブロックによって確認可能です。

Try it

モデルは、PLECS Blockset/Standaloneの「PLECSデモモデル」ライブラリに格納されています。