最適化ブレーキを実装したサーボドライブ

PLECSのデモモデルに含まれている、この事例では、PLECSの制御・電気・機械ドメインの各ブロックを組み合わせ、サーボドライブに適用します。サーボドライブシステムには、ボールねじ装置と連結したサーボモータを駆動する、ベクトル(FOC)制御インバータが実装されています。歯車の出力は、位置制御製造装置(例:フライス盤)を操作するレールシャフトに接続されています。確実な位置制御を実現するため、最適化速度制限アルゴリズム(Optimal Speed Limit algorithm)が実装されています。

電源回路

インバータ回路は、理想直流電源と3相ブリッジによってモデリングされています。インバータの出力電圧は、空間ベクトルPWM(SVPWM)によって制御されます。3相電流は、閉ループ制御のため検出されます。

機械回路

アクチュエータは、表面磁石型同期機(PMSM)によって構成されています。同期機の出力は、ボール歯車装置のレールシャフトと連結しています。この2つの連結状態は、慣性/バックラッシュ・コンポーネントを適用してモデリングされています。レールシャフト上のスライド動作によって、歯車は回転運動を並進運動へ変換します。適切な位置制御が実施されていない場合は、スライド動作の最後に部品が衝突し急停止します。

制御ロジック

スライド動作の位置制御のため、高帯域用の状態空間制御が実装されています。制御器は、スライド動作位置とモータ速度を、内部の状態制限器とアンチワインドアップ手法を用いて制御します。モータの速度を制限するため、1)固定の制限値、2)実際の目標位置からの偏差に基づいて動的に調整される最適制限値、のどちらかを選択可能です。最適速度制限を変更する大きな位置指定値が、動作サイクルの制限を回避するために必要です。

「State-Space Controllerブロック」の出力は、電動機のトルク指令値で構成されています。これは、「Digital Synchronous Frame Regulatorブロック」によって制御される、直交座標と等価な電流指令値(iq*)へ変換されます。この制御器は、モータ速度に基づいて数値的なデカップリングをおこない、状態制限器、アンチワインドアップロジックが実装されています。

シミュレーション

モデルでは、良好な減衰動作による少量のオーバーシュートを示しながら、少量の変化量でスライド部品が目標位置へ到達することが、最初に確認できます。この機構は、完全停止するかわりに、位置指定の制限値近傍で継続的に振動していることが確認できます。このような「振動現象」は、ボールねじ装置のバックラッシュによって引き起こされます。関連したパラメータ値で調整することで、この振動を低減することが可能です。

位置指定のステップを増やし、制御器で「固定速度制限:Fixed Speed Limit」選択すると、現実的な制御手段として、この位置制御手法には、最終的に大きな問題が発生します。指定位置に到達するまでの、大きな振動によって、レール上をスライドする部品が急停止します。この現象は、位置指定値を通過したにも関わらず、電動機がスライド速度を低減させるために十分なトルクを発生していないことによって発生する、動作サイクルの制限になります。これにより、トルク指令値は、加速/減速に対するスロットル全開状態の矩形波形になります。この挙動を避けるためには、制御器で「最適速度制限:Optimum Speed Limit」を選択して下さい。この速度制限アルゴリズムは、位置指定値へ到達する際の、時間/オーバーシュートを最小化します。